田所氏インタビュー

今回、神奈川県立体育センターで取り組んでいる部活動の安全のための活動について、

事業部指導研究課研修指導班の 田所氏にお話を伺いました。

 

【ご活動について】

Q:田所さんが担当している部活動の安全のための活動について教えてください。

A:部活動に特化した研修、という訳ではなく、体育の授業や体育祭でも事故がおこりますので、そのことなども含めた内容で、毎年応急手当研修講座という形で行っています。

 

Q:この研修はいつごろから始められているのでしょう?

A:かなり前から行っています。数年前までは、救命救急を中心として行ってきましたが、平成22年度より、違った発想で、応急手当研修講座ができないか、ということで行っています。

 

Q:研修はどれくらいの頻度で行われているのでしょうか?

A:年に1回のペースです。

 

Q:参加されるのは部活指導者の方(顧問、外部指導員)がメインでしょうか?

A:今年度は、全県立学校(高校、中等教育学校、特別支援)の総括教諭、を主な対象として 開催しました。

 

Q:具体的な内容を教えてください。

A:今年度ですと、「学校での事故防止と事故対応」、「事故発生時のシミュレーションの必要性」、「事故発生時のシミュレーション作成」という3部構成で行いました。

実際の事故事例などをもとに、どのように再発予防と事故対応ができるのかという話を聞いたり、法政大学の木下先生にご教授いただいて、実際に事故が起こった際、我々人間はどのように対応していくのか、ということを考えたりした上での、学校現場での事故発生時の具体的なシミュレーションが主な内容となります。

 

Q:実際、どのような事例が紹介されたのでしょうか?

A: 平成23年の9月に、さいたま市の小学校で、駅伝の練習中に、6年生の児童が倒れ、なくなった事例があります。

倒れた当初、現場で指導していた教員は、「脈がある」「呼吸がある」ととらえたため、心肺蘇生法及びAED装着をしなかった、というものです。

 

Q:このような研修を行おう、というきっかけのようなものがあったのでしょうか?

A:先ほどのケースのように、学校にAEDはあるけれど、実際に使用すべきどうかの判断は非常に迷うことがあるので、もっとリアリティのある研修が必要だと思いました。

そこで、シミュレーションを取り入れた研修を、法政大学の木下先生にお願いしました。ある意味、木下先生がおられたからこそ、実現できた内容なのかもしれません。

 

Q:特に印象深いポイント、などはありますか?

A:木下先生のお言葉をお借りすれば、3つの大きなポイントがあります。

1)記憶力の限界:同じ内容でも繰り返し行うこと、の重要性

2)工学的な限界:まずは必要なものが近くにある、ということ

3)精神的な障壁:傍観者効果という、関わりたくない、という気持ちを取り除く、こと

これらの事をクリアするための第一歩として、シミュレーションを取り入れた研修が有効ではないかと考えました。そして現場の先生方の「気づき」を促すことができたらよいと考えました。

 

【部活動の安全について】

Q:海外に目を向けると、部活動の安全な活動のため、アスレティックトレーナーの配置を義務づけている流れもありますが、県内ではどうでしょう?

県内の学校(もしくは部活単位)にどれくらいのトレーナーが配置されているか、という情報はお持ちでしょうか?

A:現在、県立学校(高校・中等教育学校)には、”部活動エキスパート指導者”、という形で32名の指導者が配置されており、その中には日本体育協会公認アスレティックトレーナーや、はり師・きゅう師などの資格を持つトレーナータイプの指導者が17名含まれています。

 

Q:部活指導において、他にも外部の方が指導するような仕組みはありますか?

A:神奈川県では、”部活動インストラクター”という制度もあります。専門的な指導のできる顧問がいない部や、顧問がいても、教員がその部活動の経験がない場合などに外部からインストラクターを招き入れることが出来る、という制度です。

 

Q:それは何か指導者資格のようなものが必要なのでしょうか?

A:いいえ、資格は特に必要とはしていません。

 

Q:安全面の観点から考えると、研修などを受けてもらった方が良いのでは?と思うのですが?

A:今年度から、初めて部活インストラクターになる人を対象に、運動部活動指導者研修講座を必ず受講してもらうようにしました。安全面などを含めた内容になっています。

 

Q:部活動を安全に行うため、必要な知識、事前準備で大切なことは何でしょう?

A:事故事例を知っておく、というのは重要だと思います。そこから 安全指導の必要性を感じ、環境整備や自己研鑽などにつながる「気づき」が生まれればと思います。

 

【スポーツ現場での安全管理】

Q:高校や中学の運動部や少年団などのジュニアスポーツにおける、子供に対してのケアや安全面の管理は十分だと思われますか?

A:残念ながら、まだ十分とは言えないと思います。AEDの設置や熱中症予防における水分補給など、環境面ではだいぶ変わってきているとは思いますが、AEDを設置したその後、実際に使用するための訓練や、熱中症になった子が出たらどうするか、という実技を伴ったシミュレーションなど、まだまだやるべきことは多いと思います。

 

Q:保護者としては、スポーツ現場の安全管理は指導者や顧問の先生にお願いするしか今はないのかな、と思うのですが、日本のシステムや制度上、スポーツ医科学に基づいた指導方法や知識、技術は全指導者が持っていると言えるでしょうか?

A:なかなか難しいですね。スポーツ医科学研究は国内でもだいぶ発展してきたと思いますが、研究ベースと現場ベースがもっと密に協力関係を築いていくと良いと思います。

 

Q:保護者やそして現在ではまだ指導者や顧問の方も、「スポーツ現場で重大な事故はめったに起こらない」と思っている方もまだ多いのかな、と感じます。日本の学校における部活動やジュニアスポーツでの危機管理意識、という視点でお話を伺わせてください。

A:重大な事故は、現実に起こっており、当事者となる可能性があるとの認識を持つことが必要だと思います。そして、意識を高めるには、知識を持つことが重要になってくると思います。

 

【保護者の役割について】

Q:子どものスポーツ参加における親の関わり方、について何かご意見があればお願いします。

A:お子さんがされているスポーツの特性を、リスクも含めて、知っておいていただければと思います。

 

田所さん、お忙しい中取材にご協力いただきありがとうございました!

子ども達を預ける親としては、このような取り組みは非常に心強いですね。

 

是非全国にも広がってほしいと思います。